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東京高等裁判所 昭和27年(う)3913号 判決

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意書第一点について。

所論の昭和二十七年九月二十九日附原審公判調書に論旨摘録の通りの記録がありそれには原審裁判官が被告人に対し刑事訴訟法第二百九十一条第二項所定の事項を告げた旨の記載の認められないこと、同調書並に添附の証拠関係カードの記載中に原判決援用の(二)乃至(七)の証拠について刑事訴訟法第三百五条第一項、第三百六条第一項の規定する証拠方法に従い証拠調をなし、且つ同法第三百八条所定の機会を与えた旨の記載の認められないことは、いづれも所論の通りである。しかし昭和二十七年二月一日から施行されている刑事訴訟規則の一部を改正する規則第四十四条は、公判調書作成の迅速とその内容の正確を期するため、公判調書の合理化を目的とし、公判期日における一切の訴訟手続を記載しなければならないとする従来の規定を改め、その第一項において第一号乃至第三十一号の公判調書に必ず記載しなければならない事項を列挙し、その第二項において前項に掲げる事項以外の事項であつても、公判期日における訴訟手続中裁判長が訴訟関係人の請求により、又は職権で記載を命じた事項はこれを公判調書に記載しなければならないと規定し、前記列挙事項以外の事項は裁判長がこれを公判調書に記載すべき旨を命じたときに限りその記載をすれば足るものとしているのであつて、公判期日における重要な訴訟手続である事項であつても一般に当然に行なわれているものと認められている事項は公判調書の必要的記載事項としていないのである。この刑事訴訟規則の一部を改正する規則第四十四条は、公判調書の合理化を図り特に審判に関する重要事項を列挙してこれを必要的記載事項と規定したもので、審判に関する刑事訴訟法所定の手続を履践するを要しないものとしたわけではなく、又刑事訴訟法第四十八条第二項は公判調書に記載すべき審判に関する重要な事項は、裁判所規則の定めるところに委ねているのであるから右規則第四十四条の規定が所論のように刑事訴訟法に牴触するものとは到底認められず、従つて右規則第四十四条の規定が無効のものということはできない。しこうして、同条は刑事訴訟法第二百九十一条第二項所定の事項の告知、同法第三百五条第一項、第三百六条第一項の規定する証拠調方法により証拠調をしたこと、同法第三百八条所定の機会を与えたことについては、いづれも一般に適法に行なわれているものとして公判調書の必要的記載事項としていないのであつて、同条の施行された日以後である所論の昭和二十七年九月二十九日附原審第一回公判期日における訴訟手続について作成された同日附公判調書が同条に準拠していることは当然であるから、同調書中にこれらの手続に従つたことの記載がないとしても、これに依つて所論のように現実にかかる手続が適法に履践されなかつたものとすることはできない。却つてこれら原審公判調書に記載されていない事項は一般に当然適法に行なわれているものと認められる事項であり、これらの事項を原審裁判官が特に公判調書に記載することを命じた形跡は記録上認められず、しかも若しこれらの手続が適法に履践されないで、爾後の訴訟手続が進められたとすれば、検察官、被告人又は弁護人は刑事訴訟法第三百九条第二項所定の異議を申し立てることができるものであり、改正後の刑事訴訟規則第四十四条はこの異議申立及びその理由を公判調書に記載しなければならないと規定しているにもかかわらず、原審第一囘公判調書以後公判手続終結に至る迄の原審公判調書を通じて右異議申立があつた旨の記載は認められず、記録を精査しても右異議申立があつたことは発見されないのである。以上の事実と原審第一回公判調書に依り被告人の被告事件に対する陳述があつたこと、証拠調方法の記載のない原判決援用の(二)乃至(七)の各証拠についても順次証拠調があつて爾後の訴訟手続の進行していることが認められることから考えると原審第一回公判調書に記載がないとしても、刑事訴訟法第二百九十一条第二項所定事項の告知が行なわれたものであり、原判決援用の(二)乃至(七)の各証拠について、それぞれ同法第三百五条第一項、第三百六条第一項の規定する証拠調方法による証拠調が行なわれ、同法第三百八条所定の機会が与えられたものと認めるを相当とするのである。なお原判決の援用する(二)乃至(六)の証拠について被告人及び原審弁護人がこれを証拠とすることに同意したことは、原審第一回公判調書添附の証拠関係カードの記載に依りこれを認めることができる。しからば原審の訴訟手続には所論のような違法はなく、又原判決は所論のように適法な証拠調の方式を履践しない証拠を罪証に供したことにならないのであるから論旨はいづれも理由がない。

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